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2007.10.20

オカメインコ 26歳

Pichan1_2
      26歳になった我家の寡オカメインコ

<オカメインコの寿命>
ヤモメ暮らしをしている我家のオカメインコがとうとう満26歳を迎えた。Wikipedia, the free encyclopedia によれば、籠で飼育されるオカメインコの寿命は一般的には15-20年で、30年生きた報告もあるとのこと。最古の標本は35歳で死んだと報告されているともある。我家のヤモメオカメは常識的な寿命は超えてしまったようである。

また、人間と同じように食事や運動量が寿命の決定因子になるともある。昼間は放し飼いに近い我家のヤモメはストレスが溜らないだろうから、まだまだ長生きするかもしれない。有名人のどなたかの言として、35歳まで飼ったオカメインコをギネスブックに登録申請したら、出生証明書がないので却下された、との記事を何かで読んだ記憶がある。

我家がオカメインコを飼い出した動機や、ヤモメになったいきさつは、このウェブログの記事第1号を飾っている。35歳まで生きるとギネスブックものというから、その時は岐阜市金町のペットショップに証明書を貰いに行かねばならない。もっともこのペットショップが今もあるのかどうかもわからないが。

  • オカメインコ
  • <過保護鳥!>
    オカメインコは保護鳥の扱いを受けるような立派な鳥ではないが、こと我家に関しては過保護?鳥である。気候の良いときは玄関のたたきで夜を過ごすが、寒い時は籠を透明なポリエチレンの防風シートと毛布で覆った上、夜は冷たい玄関から暖かい2階の我部屋に運んで寝るという過保護振りである。

    まあ26年間も一緒に暮らした家族の一員であるし、ヤモメになった時は、婦唱夫随で直ぐに後を追うのではないかと心配したが杞憂に終わり、その後4年経ったが色々個性を発揮して楽しませてくれるので、過保護になるのは致し方ない。

    Inemuri
        眠たいなあ!        邪魔をするな!        膝の上で爆睡!

    <原産地はオーストラリア>
    オカメインコの原産地は、以前のウェブログでも触れたようにオーストラリアである。オーストラリアでは日本におけるスズメみたいな存在で、オーストラリア全土に分布しているという。英名はCockatielであるが、学名はNymphicus hollandicusという。

    つまり最初にオーストラリア大陸で飛び回るCockatielを見たヨーロッパ人は、まるで神話に出てくる小さな妖精(little nymph)のようだと感激して妖精(Nymphicus)という属名をつけ、オーストラリアの古い名前であるニューオランダ(New Holland)という地名を種名(hollandicus)につけたらしい。

    余談であるがオーストラリアは、1770年のキャプテン・クックの上陸以来イギリス人が入植し領有したように思っていたが、イギリスの当初の領有は東海岸だけであり、西海岸は既に1606年頃にオランダ人によって発見され、古くからニューオランダと呼ばれていたのである。全土をイギリスが領有したのは1828年である。

    原産地のオーストラリアではオカメインコの本やグッズがあるのではないかと思い、何年か前に西オーストラリアの州都パースに在住している大学同級生の友人に聞いたところ、オウムのParrotやCockatooの資料やグッズはあるが、Cockatielに関するものは見かけないとのことであった。

    日本でも、どこにでもいるスズメの絵葉書や書物はあまり見かけないので、そういうことかとも思うが実状は良くわからない。パースの友人はそれからもずっと気にかけてくれて、彼の日本への一時帰国の時に、オーストラリアの鮮やかな色彩の鳥やオウムの、とてもきれいな栞を頂戴した。

    Parrot_4
    Birds_in_australia
             パース在住の友人から貰ったオーストラリアの栞

    <オカメインコは正確にはオウムの仲間>
    オウムとインコの違いはと聞かれて正確に答えられる人はまずいないのではないか。独特の曲ったクチバシと前後に2本づつになっている足指(対趾足)を持っている鳥で、大型の種類がオウムで、小~中型の種類がインコであるとの分類くらいしか出来ないだろう。小型の代表がセキセイインコで、中型の代表がオカメインコであると言われて不思議はない。

    英名では総称をParrotといい、分類名はPsittaciformesとなる。これを和名ではオウム目ともインコ目とも呼んでいて、一方に決まっていないのである。Psittaciformesをさらに分類すると、20種あまりのCacatuidaeとかCockatooと呼ばれる大型のオウム科と、330種あまりのPsittacidaeと呼ばれる小~中型のインコ科になる。従って科名については我々の常識とあまり違いはない。

    ところが、オカメインコは分類学的にはPsittacidaeではなく、オウムとかバタンと呼ばれるCockatoo(Cacatuidae)類の最も小型種に分類されるという。インコという名前がついているが正確にはオウムの仲間というからややこしい。オカメインコは頭上の冠羽や胆嚢をもっているが、これらはオウムの特徴でありインコにはないという。確かにセキセイインコやボタンインコは頭に冠羽がない。

    Yamome1_2
       え?俺はオウムの仲間か!

    オカメインコとは逆のケースで、オウムと名がついていてもインコの仲間に分類されるものもいる。フクロウオウム(Kakapo)やヨウムはインコ科に分類されるそうである。また大きいからオウムとは一概にいえず、コンゴウインコ(Macaw)類は最長のParrotであるが、れっきとしたインコである。

    近年分子生物学が発達し、遺伝子配列にまで遡って生物の起源が分かるようになってきたことが、さらなる混同を生んでいる。従ってオウムとインコの分類学は未だ完成途上らしい。オカメインコがオウムの仲間であることは、細胞のミトコンドリアのRNA遺伝子配列の解析からも確認されているという。  

    <バリ島にもオカメインコ?>
    我家のオカメインコをいつも絵更紗や焼物の題材にして可愛がってくれる義母が、2003年にインドネシアのバリ島に旅行した際、殻にオカメインコの絵柄を描いた卵をみつけたよ、とお土産にくれた。頭の上に冠羽があり、2本の前足指も正確に描かれ、まさにノーマル種のオカメインコである。

    オカメインコはオーストラリアの固有種と思っていたから、バリ島にこのような絵柄があるとは不思議であった。しかしバリ島でもペットとして飼われるオカメインコはいるのだろうから、単に絵の題材として描かれたのかもしれない。しかし見れば見るほど正確に描写されている。

    Egg1_2
      バリ島の絵柄egg

    <オーストラリアでインコを見る>
    2005年11月に幸運にもオーストラリアに行く機会ができた。主目的は別にあったのだが、オカメインコの原産地なので、飛んでいる野生のオカメインコの姿が見られるかも知れないと、ひそかに期待したものである。主目的の訪問地はシドニーであったが、ツアーを利用したので東海岸のゴールドコーストにも立ち寄るコースであった。

    このゴールドコーストで、コアラが生息するという海抜1000m地域の亜熱帯雨林地帯を観察できるオプショナルツアーがあったので、これぞチャンスと参加した。コアラが食べるユーカリが豊富にあって、世界遺産の国立公園になっているとのことであるが、こちらはコアラよりもオカメインコが念頭にある。

    スプリングブルックという名の国立公園に行き雄大な景色を見た後、展望台の近くの広場で休憩していたところ、鳥影が飛来してきた。すわ、オカメインコかと思ったが、木の枝にとまったところを見るとインコには違いなかったが、赤、青、緑の鮮やかな色の大きなインコであった。

    Inko
                Springbrook National Parkで見た野生インコ

    やはりオーストラリアはインコの生息地ということを実感したが、お目当ての我家のヤモメオカメが属するノーマルグレイ種のオカメインコではなかった。Wikipedia, the free encyclopedia でオーストラリアにおけるCockatielの生息地図を見ると、東海岸ではかなり内陸に入っているので、このあたりは生息地ではないのかもしれない。

    <オカメグッズを発見!>
    この後カランビン自然動物公園というところへ案内された。この公園はコアラを抱いて写真が撮れることを目玉にしているのだが、こちらはコアラならぬオカメを探して、園内の木々に飛来する鳥にばかり目が行ってしまう。先ほどの色鮮やかなインコが多数飛来して来ていたので、中にオカメが混じっていないかと見ていたが、ついぞ発見できなかった。

    しかしオーストラリアまで来たので、何かオカメグッズがないかと探していたところ、土産物コーナーで、カップルの鳥が把持部になっている素焼き調のトレイを家内が発見した。頭には冠羽があるのでオカメインコをあしらったようにも見えるが、尾羽がオカメのそれでなくボタンインコなどで見られる短い尾羽である。

    それでも日本では鳥がくっついたこんなトレイは見たことがないので、喜んで買い求め大事に持ち帰った。帰宅後、このトレイに餌をいれて食卓においてあるが、我家のヤモメは全く動じることなく、気が向くとトレイの縁に乗って、把持部のオカメモドキのカップルと一緒に餌を食べている。

    Meal1
          素焼き調オカメトレイ          一緒に餌を食べているつもり!

    <絶滅危惧種のレッドリストに!>
    というわけで、オーストラリアで野生のCockatielの妖精達が群れを成して飛翔しているところを見るのは、次の機会となってしまったが、我家のヤモメが健在の間に見たいものである。もっとも彼の寿命がギネスブックに近づく頃には、飼い主の方がお先にということもあるので、あまりゆっくりはしていられない。

    それにしても初めてオーストラリアにヨーロッパ人が上陸して、この鳥を見たのが17世紀の初頭であろうから、以後400年間が経過している。Cockatielは次第に生息地を人間に奪われたり、ペット用に乱獲されたりして、数が減ってきているのではないだろうかと少し気になった。

    近年、野生動物保護のため、国際自然保護連合という国際的な自然保護機関が、世界の絶滅のおそれのある生物種のリスト(レッドリスト)を作っている。Cockatiel(Nymphicus hollandicus)も絶滅危惧種のレッドリストに載っていてびっくりするが、Lower Risk(Least Concern)というランクなので、今のところその心配はないようである。
    オカメインコのレッドリスト

    なお、このリストではFamily(科名)がPsittacidaeとなっているが、上記のように現在ではCacatuidaeに分類される。

    <続編>
    この続編は、「オカメインコの回想」にアップロードした。

  • オカメインコの回想

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