韓国四方山話
安山夜景
繊維関係のセミナーで韓国に行ってきました。11月23日に日本を出発して、まず安山のKMF(Korea microfiber)社を訪問、次いで大田の忠南大学での韓国繊維産業聯合会の技術セミナー出席、最後にソウルのSilverStar社を訪問して、29日に帰ってきました。よくご存知の方もおられるでしょうが私には始めての韓国でした。
国際線とはいえたったの1時間半しか乗っていないという極めて近い国です。関空からだと北海道のほうが遠いでしょうね。時差もないし日本の一地方に行って来たと言う感覚です。
近くて何も知らなかった国ですが、始めて行ってみてなかなか立派な国だと印象を新たにしました。特に若い優秀な人があちこちに居て頑張っていることが良く分かりました。韓国のサッカーやバレーボールが日本を抜かしてしまった原動力が何となく分かります。女子ゴルフなど今やソレンスタムを除けば韓国勢が世界トップクラスですね。
繊維は韓国では未だ国家の重要戦略産業に入っていますし、特にマイクロファイバー産業は国が助成金を出すので、ここ10年以内に起業したマイクロファイバーベンチャーが100社程度あるそうです。大手の韓国原糸メーカーにいた若者がスピンアウトして会社を作るので、社長は40歳前半の大変若い会社が多いようです。
日本の大学に4年間いたという37歳のL君と知り合いましたが、現代韓国の悩みも伝わってきました。韓国では今若者の理工系離れがひどいとのこと。日本と同じかと思ったが少し違います。
韓国は全て昔の日本(今もそうかもしれない)を見習っているため文科系が幅をきかす社会になっているので、技術系学生は就職しても文科系より給料が低く、また独創性というものを大事にしない風土なので、心有る技術系学生はほとんどアメリカ他海外に行ってしまうとのことです。
歴代大統領の中で唯一全斗換が科学技術振興策をとった以外は全く今まで通りの社会になっている。従って韓国の技術系企業の経営者は等しく今でも全斗換を尊敬しているとのことです。
中国が理科系人材をどんどんとりたてて閣僚に据えているのと大きな違いで、技術系になってもどうしようもないという意識が若者に強いのだそうです。(日本も少し違うが閣僚の結果は似ていますね。)
L君は卒業後、韓国生産技術研究所に勤めたが、およそ自分の独創性を活かせる場所ではないことを悟り、現在はフリーの立場で英語、日本語、繊維の知識を生かして次のステップを考えているとのこと。多分中小企業に入って自分のやりたいことをしてやろうと思っているそうです。
そういわれれば確かに韓国企業で独創力があって大きくなった企業は少なく、資本力にまかせて日本や欧米の良いとこを取り入れて大きくなった企業が多いですね。従って今や中国の進出に苦悩し始めている。
韓国作法と日本作法が合わない点は多々あるのでしょうが、食事作法については取り皿や取り箸がなく皆が自分の箸やスプーンを突っ込む方式には私は閉口。しかしあれだけニンニクや唐辛子がかけてあればSARSやBSEも恐れおののくでしょうね。プルコギ(高級炊き肉?)を毎日どこかで食べたので、暫く肉はええわという状態です。
交通は日本と違いメイン道路は片側4車線、5車線が当たり前で広いのですがそれ以上に車がひしめきあいソウルの町など渋滞が目茶ひどい。車線変更もひどく携帯電話をかけながらウェーデルンしていく車が無数です。車庫なしでも車が買えるので一家に2台以上が当たり前と言ってました。
日本の左折にあたる右折はいつでもOKなので交通事故も多く日本の道路交通法のほうがずっと安全ですよと変に感心されました。幹線道路から外れると合法?駐車の山で工場や家庭に駐車場を作るという意識がなかったので、これから厳しくなるとのこと。
食事作法や交通マナーでは今一つ異質な韓国ですが、感心したのは年輩者、妊婦、車椅子使用者に対する優先座席のマナーです。地下鉄でも国鉄でも優先座席の使用については日本の若者とは大違いで、彼らは実にきちっと守ります。私の顔を見てさっと優先座席を譲ってくれた若者がいたので、お礼を言うべきか、馬鹿にするなと言うべきか迷った次第。此の辺は年長者を敬う気質が現代韓国にもしっかり息づいて居るようです。
悩みや矛盾も色々あるのでしょうが、今や韓国は大きな変革期を迎えているようで、小泉改革の成否が問われている日本と似たような状況にあるように思いました。今のところ日本の方に一日の長があるように思いましたが、独創性を大事にする意識が韓国に芽生えてくるとサッカーやバレーのようになるかも知れません。
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